インフォメーション
H31.1.7 動産譲渡・債権譲渡登記(その4)-動産の保管場所の所在地
今回も、司法書士向けの情報提供です。
以前にもご紹介しましたが、動産譲渡・債権譲渡登記には、いくつか特殊な点があります。(詳しくは、動産譲渡・債権譲渡登記 その1をご覧ください。)
その1つに、登記原因証明情報の提供を必要としないという点があります。
そのせいもあってか、この登記については、登記申請すればすぐに受付けてもらえるというイメージを持つ方もいるかもしれません。
ところが、債権譲渡登記ではそうでもないのですが、動産譲渡登記の場合には、法務局の職員からいろいろと質問されます。こちらの返答次第では、取下げとなります。
その際たるものが、動産譲渡登記の存続期間が10年を超える場合です。とくに、被担保債権の償還期限との関係です。これは、すでにご紹介しています。(詳しくは、動産譲渡・債権譲渡登記 その2をご覧ください。)
今回は、動産・債権譲渡登記規則 第8条をご紹介します。特例法 第7条第2項第5号(登記事項を規定しています)を受けた、このような規定です。
第8条 「法第7条第2項第5号に規定する譲渡にかかる動産を特定するために必要な事項は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める事項とする。
一 動産の特質によって特定する方法
イ 動産の種類
ロ 動産の記号、番号その他の同種類の他の物と識別するために必要な特質
二 動産の所在によって特定する方法
イ 動産の種類
ロ 動産の保管場所の所在地 」
非常に読みにくい条文ですが、第1項第1号は個別動産の場合を、第1項第2号は集合動産の場合を規定しています。
前置きが長くなりましたが、集合動産を譲渡する場合には、第2号ロにより「動産の保管場所の所在地」が登記事項となります。
法務局の取扱としては、この「動産の保管場所の所在地」は、不動産の登記事項証明書で証明できるような土地の地番表示又は住居表示等公的なものに限る。
当事者が任意に区分した記号(契約書上では「何番地あ」とか「何番地い」とかがよくあります)は登記できない。
ナルホド! それはそれで納得できます。動産に強制執行をかけるときには、その所在地は登記事項証明書で証明するしかないでしょう。
ただ、法務局はさらに、「土地の地番表示又は住居表示を譲渡当事者が任意に区分しても、その土地上のすべての動産が譲渡されたものと理解する。」とのこと。
これにはビックリ。
でもよく見ると、確かに、動産譲渡の登記事項証明書の欄外の小さな文字ではありますが、注2にその旨の記載がありました。
「2 動産の所在によって特定する場合には、保管場所にある同種類の動産のすべて(備考でさらに特定されている場合には、その動産のすべて)が譲渡の対象であることを示しています。」と。
ただ、実際問題として1筆の土地上のすべての動産について債権者が強制執行できるかについては、どうでしょうか? 他の区画の動産所有者は異議申し立てをするでしょうから。
いずれにしても、法務局の取扱にはご注意を。何分にも All or Nothing ですから。
対応策としては、「備考欄」に「設備ID」等を記載して譲渡される動産を特定・限定するのが良いでしょう。