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R 1.9.18 平成31年度 民事信託実務入門講座 第6回「配偶者居住権類似信託」
R1.9.18(水)18:30~20:30 今回も東京 神田駿河台の中央大学駿河台記念館で、本年度の第6回民事信託実務入門講座が開催されました。テーマは「配偶者居住権と配偶者居住権類似の信託」でした。発表者は民事信託推進センター会員の司法書士です。
今回から第8回までは事例研究です。民事信託推進センター、民事信託士協会の有志5~6人が集まり、テーマを決めて約半年間をかけて信託契約書等を練るというものです。そのグループのうちの1人が代表して発表します。
今回のテーマは、他の書籍や講義ではほとんど全く議論されていないもので、最先端の議論でした。
そのせいか、そもそも「配偶者居住権類似の信託」を作る必要があるのかという疑問を持つ出席者が多かったようでした。
自分もこの講義を聞くまではそう考えていました。
そのように考えるのも理由があるように思います。
どういうことかというと、遺産分割によって建物所有権と配偶者居住権を異なる相続人に相続させることは、信託でいう受益権の複層化に似ています。ですので、配偶者居住権制度によって配偶者の居住が保護されれば、わざわざ信託を使って配偶者の居住・生活を保護する必要はないように思えるからです。
しかし、民法改正前はどうだったかというと、①遺産分割により配偶者が土地建物を取得する、しかし配偶者の法定相続分が土地建物の価格に満たない時には②配偶者が土地建物所有権を取得する反面代償金を支払う、あるいは③建物所有権を取得した他の相続人から建物を賃借するということになります。配偶者はなにがしかの出損を強いられることになります。
これに対して改正民法は、第④の選択肢として、建物所有権と配偶者居住権を別の財産として遺産分割することを可能にすることで配偶者の居住を保護しようとするものと考えられます。言い換えれば、遺産分割の方法を多様化し、あるいは配偶者の居住を保護する方法をを多様化したものともいえるように思えます。
とすれば、被相続人が亡くなった後の遺産分割が揉めると予想されるような事情があるときには、無理に遺産分割に期待することなく、第⑤の選択肢として被相続人の生存中に別の方法を認めるほうが、配偶者の保護の多様性を認めるという改正法の趣旨にもかなうのではないかと思えます。その1つに配偶者居住権の遺贈があり又信託があると考えられます。ただ、信託の場合にはこれまでの信託契約書のように配偶者の居住を受益権とすると、その受益権は使用貸借と同様だと判断され、元本受益者に100%の課税がされることになってしまう、それでよいのかという問題意識が背景にあるように思います。
いずれにしても今回の事例研究は新しい問題提起で、しかも奥が深い試みだったと思います。